2007年07月13日

ブランドを作るために割り切るということ

アメリカの電話会社Sprint/Nextelは、お客様相談窓口に頻繁に電話してくる顧客1200人のサービスを打ち切ると発表した。ハイ・メンテナンスな顧客を抱えていることは、商売としてペイしないと判断したのだ。(B3 Annex

これは純粋に投下コストに見合わないからという判断のようで、何ともアメリカン。

本来、なのかわからないけれど、商売というのは、それが簡略化されていようと
一種の契約行為になるわけで、その時点で店側が断ることも選択肢の中にはある。
消費者主導、お客様は神様というのとは別の切り口で、こちらからお断りというのも
もちろんあっていいのではないかとは思う。

機会費用の観点から言っても、その望まざるお客に対して割くリソースを
他のところに向ければ、本来望んでいたお客との取引も円滑になりうる。
顧客を尊重するというのは結構難しい判断で、お客を歓待するだけでなくて、
お客さんを「一人の取引相手」としてマトモに扱う、ということもいえるとは思う。

で、最近ちょっと思うのは、ブランドというものを作ろうとするにあたっては、
顧客に対するスタンスを明確にしなければならないなということだ。
明確にした上では、当然ながら、お客さんを「断る」こともありうる。
むしろ明確になればなるほど、それと異なるお客さんを断らなくてはならない。
そこでは、「どういうお客さんは諦めてもいいか」を考える必要が出て来る。

高級ブランドは、価格を下げれば、顧客の裾野が広がってもっと売れそうだ。
だけど、そうしないで、ある程度顧客を「断って」いるからこそ、その判断を
支持して、ファンになってくれている顧客もいる。

代理店としてブランド作りのお手伝いをするときも、やってしまいがちなのは
「どういうブランドになりたいですか」なんて質問を投げかけて、それこそ
一般的な「イノベーショナル」「尊敬される」「地球に優しい」とかいう
誰にも断られず、誰をも断ることのないコンセプトに帰結することだ。

それはそれでいいのだけれども、やはりリソースが限られている以上は、
八方美人、全面対応というわけにはいかない。
何になりたいかということも重要だが、「誰なら断ってもいいか」ということを
先にはっきりと決めておくことが、ブランドの観点からも重要だと思う。
その手の明確な「諦め力」「割り切り力」は、車輪の片輪だ。

消費者主導になるということは、必ずしも消費者の奴隷になることではなく、
対等な立場で向き合って、誰を受け入れ、誰を断るかということでもあり、
その顧客を断るがゆえの哲学というか、明確な方針を持つことでもある。

この手の諦め、割り切りが苦手な企業は、ブランドを作るのが難しい。
人間関係もそうだろうと思うが、やはりキャラ立てをするならば、
どういう側面なら諦めていいか、ということを考えることが不可欠だ。
(なので、なんでも合議制・多数決で決める企業はブランドを作りづらい。)

そういうことを考えるに、まあ最終的に必要なのは信念や勇気であって、
泥臭いけれども、それがゆえに「お断りいただきます」ということも
ブランドのためにはある程度必要とされる能力ではないかと思う。

koukokugyokai at 03:01 │Comments(0)TrackBack(2)

トラックバックURL

この記事へのトラックバック

1. 懶惰主義とブランディング  [ さつませんだい徒然草 ]   2007年07月13日 15:57
 資本主義の「精神」が嫌だを読んだ。うわぁ〜。めっちゃわかる気がする。  でもって次にブランドを作るために割り切るということを読んだ。あるある。よく見るよ、そういう割り切り。  この二つの文章は、近いところから発せられてるような気がする。  この....
2. 断ることもこれまたブランド  [ interactiveに行こう!! ]   2007年10月10日 11:00
  最近ちょっと思うのは、ブランドというものを作ろうとするにあた...

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔