2008年09月12日

「ブランディング」のすれ違い

ちょっと前にネットで「ブランディング」という言葉を目にしていて、違和感を感じることがあった。ネットメディアの人が言う「ブランディング」と、オールド広告人(=自分)が考える「ブランディング」に、隔たりがある。これは何だろうと思っていたが、大ざっぱに言うと、ネットメディアにおけるブランディングは「量」を指しており、オールド広告人の言うブランディングは「質」のことを指している。わりとそこら辺ですれ違っているようだ。

ネット広告というのは個人の具体的な購買にいかに張り付くかというところで既存メディアと差別化しているので、基本的にはディープなターゲティングと、購買になるべく近いところでの広告差し込みがポイントになってくる。これは購買を基準にした効率で効果を定義していることによるわけで、それがこのメディアの可能性でもあるし限界にもなったりしている。そうするとネットメディアの人々にとっては、とかく露出が多いバナーみたいな存在は重要ではあるが売りにくい存在になってしまう。その流れから、「や、購買には直接結びついていないけど認知を高めることで間接的に効果が出ていますよ」という、それをブランディングと呼んでいる。だから基本は量の露出がブランド効果という文脈になる。

対して、オールド広告人は数十年マス広告をやってくる中で、需要が伸び悩み商品は細分化するような時代に突入し、そんな中でいかに「暴力的な露出によって新商品は売れるがすぐ他社の新製品に塗り替えられる」現象を打破するかということに悩んでいた。そんな中で、持続的に顧客と関係を作って、ポっと出の暴力的な露出をする新商品に対抗し、安売り競争に巻き込まれないようにする方法としてブランディングに注目し始めている。だから、露出の量は前提としつつ、露出の質に対して神経質になる。質と継続性がブランドをつくるという考え方だ。

このあたりの差があるので、両者がブランディング議論をすると微妙なすれ違いが生まれるのではないかと思う(議論をしたことがないのでわからないけれど)。

私はオールド広告系なので質派ということになる。なのでその観点から語ってみる。量、つまり認知の多さだけではブランディングというのは難しい。例として銀座と品川を考える。

「銀座」。銀座はブランドだろうか。「大阪における銀座はどこ?」「うわーあの人、銀座っぽい」。こういう会話が成り立つのは、銀座がイメージの広がりを持っており、その会話をしている人たちが、何が「銀座的」であることについてある程度の了解を持っているとされるからだ。多くのモノやコトについて、銀座的かどうかの判断は比較的かんたんだし、ぶれがないと思う。

では、「品川」はどうだろう。品川は、東京近郊の人なら地名としては知っているし、東京の人でなくても新幹線を使う人なら名前は知っているかもしれない。でも、銀座に比べると品川はブランドといいにくい。それは高級できらびやかなイメージがないから、ではない。聞いたことはあっても、そこにイメージが広がらない、何が品川的なのかが共有されていないからだ。

たとえがよくなかったかもしれない。いやそれはやはり認知の強度の問題で、みんながまだ品川についてよく知らないためだといわれるかもしれない。

現場の例で考えてみる。ここにある商品Aがある。Aは定期的にキャンペーンを打っている。今年の夏はタレントBを使用し、さわやかに売り出した。ところが競合Cが癒し系で売ってきて、シェアをだいぶ奪われた。そこで秋から方針転換をして、癒し系の女優Dを使ってキャンペーンを張った。ただ、食い合いになってしまったという反省も含めて、来年の夏には洗練をテーマにすることにした。・・・極端な例だが、こういうことは起こりうる。何が起こるかというと、名前はみんな知っているのだが、人によって持っている印象が異なったり、時期によってころころ変わるためになんだかわからない印象になっていたりする。認知はあるがブランドになりきれない。

ところでウェブなのだけれど、(最近はそうでもないが)ネット広告はキャンペーン広告的な表現を用いることが多い。理由は最初に述べたとおりで、効率から最適化しようとするとどうしてもキャッチーでベタな表現になることが多いためだ。それでも軸がぶれていなければいいのだけれど、効率が落ちてきたりすると表現を刷新したり、よりターゲットに近い表現に最適化したりして一貫性が保てなくなることが多い。そうなると、オールド広告人の考える「ブランディング」とは方向がずれてくる。このあたりに、効率と一貫性のジレンマみたいなものが生まれてくる。それとともに、用語としてのブランディングにも微妙に混乱があったりして、ネットにおけるブランディングがどうあるべきか、というのはまだまだこれからという印象がある。

オチはとくにありません。

koukokugyokai at 02:09 │Comments(15)TrackBack(0)

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by モバイル系広告代理    2008年09月12日 10:15
鋭い着眼点、大変参考になります。

ネット系のブランディングの捉え方、
もっともだと思います。

ネットは成果が測れる事が前提なので、
成果がわからないor悪いと予想される広告に対して
認知効果≒ブランディング
と言う事が確かにあります。


思うに、ネット広告人はオールド広告人の持つ
「伝えたい(ビジョンや)メッセージを(見込)顧客に共有させ行動に至らせる」
というスキルはほとんど必要なく、如何にその場その場で
「(衝動的に)売れるクリエイティブは何か」といった
超短期的な取り組みに心血を注ぐ事に取り組んでいるので、
長期的な視野を持つブランディングの本質が理解できないのかなと感じます。

だからネット系広告代理店は他社との差別化が難しかったり、
競合代理店との値下げスパイラルに陥っている現況にあるんだなと認識しています。

今は少しずつ総合系の人がネットに入ってきて
ネット系代理店も変わってきているのかと思いますが、
成果ありきの広告で食べてきた人達のマインドは早々に変わる事は無く、
まだしばらくは「ブランディング」を言葉の本質とは程遠い、
口当たりのよい営業トークのひとつとして使われるのかなと感じます。
2. Posted by モバイル広告人    2008年09月12日 10:16
鋭い着眼点、大変参考になります。

ネット系のブランディングの捉え方、
もっともだと思います。

ネットは成果が測れる事が前提なので、
成果がわからないor悪いと予想される広告に対して
認知効果≒ブランディング
と言う事が確かにあります。


思うに、ネット広告人はオールド広告人の持つ
「伝えたい(ビジョンや)メッセージを(見込)顧客に共有させ行動に至らせる」
というスキルはほとんど必要なく、如何にその場その場で
「(衝動的に)売れるクリエイティブは何か」といった
超短期的な取り組みに心血を注ぐ事に取り組んでいるので、
長期的な視野を持つブランディングの本質が理解できないのかなと感じます。

だからネット系広告代理店は他社との差別化が難しかったり、
競合代理店との値下げスパイラルに陥っている現況にあるんだなと認識しています。

今は少しずつ総合系の人がネットに入ってきて
ネット系代理店も変わってきているのかと思いますが、
成果ありきの広告で食べてきた人達のマインドは早々に変わる事は無く、
まだしばらくは「ブランディング」を言葉の本質とは程遠い、
口当たりのよい営業トークのひとつとして使われるのかなと感じます。
3. Posted by ガラパゴス    2008年09月12日 11:58
5 ブランディングという言葉の定義の差は確かにあるように感じます。
近年、表現のリッチ化によってインターネットでも色々な体験を提供することができるようになってますよね。
つまりオールド広告人にとってのブランディング自体はネット完結でも実現可能だと思います。当然、商品やブランドの抱えている課題にもよりますが。。
総合でもネット専業でもキャンペーン設計する人がどういう視点を持っているかによって、言い換えると、このあたりの意識を持っているか否かによってブランディングの中身は変わってくるのではないでしょうか。
4. Posted by サトシ    2008年09月12日 13:02
はじめまして。
私は17年オールド広告に従事し、現在ネット広告に携わるものです(でも専業系ではありません)。
コメント投稿の方々も含めて少々極論で物をおっしゃっているなと感じます。
失礼ながらブランディングにおいては個々のブランド接点(いわゆるタッチポイント、コンタクトポイント)について取り上げて語ることは無意味でしょう。ブランディングのためのコミュニケーションは包括的に構築しなければならないものです。
ひとつひとつの接点は単なるツール、つまり道具でしかない。家を立てる業者選択で金槌だけを取り上げて良し悪しを語るようなものです。
WEBメディア専門職の人間の業務領域は当然WEBです。狭義の意味においてブランディングという言葉を便宜上、おっしゃるような使い方をすることは確かにあります。が、あくまでもひとつのツールを便宜上表現する手段として用いているのであって、ことを認識している人間はWEB専業サイドにも大勢います。
むしろ総合系の方々の方がプロダクトアウトからのメディアミックス型から脱却できない方の方が多いと私は感じます。
そもそもオールド、ネットと分けられる方こそメディアニュートラル視点が欠落しておられると感じますが如何でしょう?
ちょっと挑戦的な文章になってしまいたが済みません(^^;
決して攻撃する意で書いているわけではないので。。
コメントではどうしても言葉足らずになってしまいますね。
ちょっともどかしいです。
5. Posted by ひろし    2008年09月12日 13:53
3 こんにちは。昔から量と質を兼ね備えなければブランと呼べないと思います。オールドにおいても認知=量の閾値を超えてから質に転換していたと思います。基本的にマスでブランドを作るということは量の問題だと思います。もしかするとピンターゲットできてコミュニティで情報の再生産をするネットの方が、投入量の閾値が低いような気がします。
6. Posted by 悩めるストラテジックプランナー    2008年09月13日 21:12
前から、このブログを読んでいる者ですが、
このエントリに対してがっかりしました。
オールド陣営とネットと分けている辺りで、そう感じてしまいました。
このエントリでは、広告βさんが日々業務を行う上で感じたことをただ述べているのかもしれませんが(質派と量派に関して)。
ただ、そんなことよりも、ブランドを作っていくにはどのようなコミュニケーションがいいのか?などマス+Webでどうすればいいのかといった考察を述べてもらいたいです(私の要望ですみません)。
Webには、大きく2つに分けて、体験・経験させる目的(ブランディング?)と購買につなげる目的(プロモーション)があると思います。だからこそ、量と質なんかで分類するのではなく...

悩めるストラテジックプランナーより
7. Posted by bad dude    2008年10月04日 12:46
これオールドとかニューとか、(オフラインと非オフラインって区分したいのかな?)比較すること自体無意味だし、それがそのまま銀座と品川に当てはめられてないところが、今頃額叩いて「しもうたあ!」ってなってそう。


・・・酔っ払ってるときに書いちゃった?


今までのエントリー見てたら、なかなか思慮深いことかいてるなあって思ってたから特に。

誰かがテレビとインターネットを比べたら後者はゴミだー、なぜならニコ動のコンテンツ一つ一つの完成度ひくいし~

見たいなこといって、ぼくの失笑買ってましたけど。他にも失笑してる人は居ると思うけど。


それと同じ議論。


比較対象がしっちゃかめっちゃかになってるとこらへん、メディアとしても、メディアとしてじゃなくても、インターネットコンテンツと、そしてインターネットそのものを捉えきれていないひとが言い出す傾向にあるように思う。


たぶん本当にわからないんだろうね。しかも全くもう、理解する気ナシです!でわかりませんってのじゃなく、なんとなく触れて、わかった気になってたけど、次から次に新しい手法、表現方法、技術、展開法が出てくるから、ついてけてないんだと思う。


このエントリーで唯一の正解は、あなたがオールドだってこと。


それには質の高い人だとか、そんなコノテーション一切含まれてなく、単にもう古い人なんですよ、という。



↑オチだけど、このコメントくらい、で???なエントリーだってことが、ぼくのポイントかも。あまりにびっくりして。

8. Posted by bad dude    2008年10月04日 13:11
連投ごめんね。

突っ込みどころが多すぎて、肝心の言いたかった事が全然書けなかったじゃんかもう笑


代理店一年生に語る気分。。。でも大切だとは思うからあえて尋ねるけど、



銀座がブランド、はそうだよ。



でも銀座=オフライン広告って無茶苦茶な結びつけは、なあに?



銀座は、広告の視点(無理やり乗って、ここは笑)で考えたらどう考えても商品、つまりクライアントの依頼対象だよね。



銀座は、広告でアピールされるもの。されてきたもの。その広告によって、生み出されて、植えつけられたイメージ=今の銀座ブランド。



その展開に、利用された媒体自体が広告ってだけじゃん。



いわなくてももう額叩き終わってわかってると思うけどー。


はい、おさらい。


1)銀座=プロモートされるもの
2)広告=1)の手段
3)テレビかオンラインか*=2)の手段


*このわけかたしてる時点で本当は本当にやばいとおもうんだけどそこはそっとしとくね。


そんだけじゃん。あなたの本当に比較したかったこと、してみたかったけど出来ずに混乱しちゃったことってさ。
9. Posted by bad dude    2008年10月04日 13:12
これで終わり。


テレビCMってブランドあるよね。でもインターネット広告ってブランドないよねってことでしょ。


で、それなんだけど。


胸張って「テレビ広告とインターネット広告どっちが質高い~ぃ?」って聞いて回って、その結果で喜べる自信、あるの?



テレビでもそう、インターネットでもそう。くずみたいなのいっぱいあるじゃんか。面白いのもあるけよね。けどさーあ、大前提として、広告なんて「便利」枠を絶対に出ることの出来ない=必要なものではない、んだからさ、広告自体が好意を抱かせることが出来るわけないんだよ。


誰に?


それは、広告主が、その広告を出稿する相手。


広告作ってるほうは、営業だったらそりゃあ生活の糧だから広告(内容以外のことについて)好きです、だろうし、クリエイティブだったら自分の人生の役に立つのだろうか。。。ハラハラってやってきた美術のスキルが活かされて、なんかヘタしたら親に胸張れるよ!すごいわたし!なお仕事なんだから、もうそりゃあラッキー着地すぎて大好きにもなるよね。




でも、いまさらだけど広告って誰のものなのさ。




こんなの言わせて欲しくないんだけど!!
10. Posted by fsdf    2008年10月10日 13:54
あsdf
11. Posted by 修行する社員    2008年10月13日 23:57
5 ブランディングと言う言葉に反応して見入ってしましました。
奥の深さを感じます。
12. Posted by んなの言わせて欲しくないんだけど!    2008年10月17日 05:06
1 Posted by bad dudeくんよ。
ミスリードの上に、調子コイて
自説をぶちまけるのはやめといた方が良いよ。

文意をたどれば、オールドとかニューの比較として、
銀座と品川を持ち出してる訳じゃないでしょ。

さらに言えばさ、オールドとかニューを
オフラインと非オフラインって区分したいのか?って
決めつけして、その比較自体無意味だって言われてもね〜

小賢しいたらありゃしね〜って感じだ。



13. Posted by bad dude    2008年10月17日 10:47
>13

本人かな?名乗ればいいのに笑

リアクションしてくれてありがとう。
まってたから、その点はうれしい。

だけど反論するならちゃんと、主張して。
ヤジだけじゃあ返しようがないよ。

あなたの主張は

>自説をぶちまけるのはやめといた方が良いよ。



>小賢しいたらありゃしね〜って感じだ。

しかないけど。。。


これを読んでどうしてほしいのさ。
14. Posted by bad dude    2008年10月17日 10:48
間違えちゃった。

>13 ×

>12 ○

ね。
15. Posted by まさ    2008年10月26日 18:48
「生活者とはなんだったのか?」のエントリのような鋭いインサイト期待しております!!!!!!!!!!!!
上記のネガティブコメントは1/10000くらいの気がするので、気にしないでNEWエントリ期待しております。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔