2009年05月26日

日経ビジネス特集「物欲消滅」が面白い

日経ビジネスの特集『物欲消滅―「買わない消費者」はこう攻めよ』が面白かった。購買意欲が減退しているという現状は景気が大きく影響しているのだろうけど、現実にどう各社が対処しているのか、ケーススタディがいくつかの方向性にわかれていて刺激になった。それで思ったこと。

ひとつは、買ってもらう以前に、捨ててもらう設計というか、気持ちよく捨てられる環境作りというのがあるのかもしれないということ。すでに持ち物が多いことというものもちろんあるし、それにくわえて「買う・捨てる」という行為そのものに罪悪感が伴うようだと、やはり二の足を踏んでしまう。とはいえ解決策は、数年で飽きてしまうように商品を設計するとか、壊れやすいモノを作るとかそういう邪悪な方向ではないだろう。ひょっとしたら、リサイクル技術の発達ということかもしれないし、さらにひょっとすると途上国支援との組み合わせかもしれない。アイデアが問われると思う。

仕事でも思いを強くしているところなのだけれど、消費には今かなり「言い訳」が必要とされているのだと思う。商品選択ではなくて、消費そのものに。広告のメッセージは選択の理由づけであることが多くて(他社よりここが優れてます、とか)、そもそもの消費自体を言い訳してくれないことが多いように思う。これは広告メッセージを競合比較などから作りすぎてしまうことの問題だし、さかのぼるのであれば商品企画も他社比較ばかりで進めてしまうことに原因がある。でも今は、選択以前にモノを買うこと自体への言い訳が必要だ。これは世の中全体の消費傾向が単一でなくなってきている(三種の神器とか)ことが影響しているのだと思う。たとえ合理的でなかったとしても、というか合理的でなくたって全然問題ないのだけれど、気持ちよく買える言い訳作りはあってもいいなと感じた。

広告がらみでいうと、以前からの持論である「CM長尺論」を再確認した。記事の中で、商品レンタルを通じて購買をしてもらうビジネスが取り上げられていた。言ってみればこれは広告の敗北のようなもので、実体験をしてもらわなければ効用が実感できないということだ。とくに「いまの、自分のリアリティ」から実感として遠い商品は、レンタルでもしてもらわない限りその効用を実感できない。本当は広告でそれを伝えるべきなのだが、15秒のCMやグラフィック一枚でそれをやるのが厳しいという現状ではないかと考える。CMをやるなら、30秒以上の長尺で、その効用を理解してもらいつつ、CMコンテンツ自体を楽しんでもらえる工夫も同時に必要だと思った。

あとは、商品というのは快感を運ぶメディアだということ。人は、快感(幸福だと、ちょっと言い過ぎかも)を商品を通じて買っている。思い出したのはCDのこと。かつて音楽市場では、音楽という情報をCDというメディアを通じて手に入れていた。ところがデータそのものが直接やりとりできて、物理メディアであるCDが要らなくなると、物理メディアをかませることで成り立っていた市場が崩れてきた。それと同じようなことが起きるかもしれない。もちろん快感はまだ、データのように直接やりとりしたりコピーしたりはできない。けれどもモノを消費することを前提としない「所有から利用」への転換が進んでいく中で、所有→廃棄を前提とした仕事の回し方をすることがリスクになってきているような印象を強くした。モノを持たなくても幸せになれるなら、それはある種の理想社会なわけで、そういった社会のなかで成り立つビジネスというのもありうるかもしれないと思う。

でも、もっとも印象に残ったのは、記事内で成功したとされるいくつかのアイデアは、結果や反響の大きさが想定外のものであったことだ。必ずしも、発案者が思ったような利用のされ方をしていない。小さくてもいいから、新しい仮説を考え、試していくことが重要なのだろう。お金がないから売れないのだ、一択、はい終了ではなくて、色々模索しながら新しい消費のあり方を提案している企業はたくましいし、そこから次の時代の「消費」の姿がみえてくるのだろう。

単に不景気で話が終わらず、消費構造・社会構造にも触れていて、大きな流れがうっすらと見えてきておもしろい記事でした。おすすめ。

koukokugyokai at 01:24 │Comments(9)TrackBack(1)

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1. モノではない。感情。  [ WEB guncy ]   2009年05月28日 16:23
人が何かを欲しいと思うとき、例えばブランドものの服とかパソコンとかお金とか、そう...

この記事へのコメント

1. Posted by dreamyou    2009年05月26日 20:39
「もちろん快感はまだ、データのように直接やりとりしたりコピーしたりはできない。けれどもモノを消費することを前提としない「所有から利用」への転換が進んでいく」
というところ、すごく共感します。
下記も参考になるかもです。

■感情は取引されている
http://pansie.blog110.fc2.com/blog-entry-28.html

・・・この辺りに、プロサンプションのマネタイズのヒントがあると睨んでいます。
2. Posted by 広告β    2009年05月27日 01:22
示唆深い記事の紹介、ありがとうございます。
データがほぼ無限に貯蔵できるようになって、検索の技術が重要になった。
自由と可能性が飛躍的に広まって、それに伴う責任意識が人を苦しめ始めた。
基本的なことががらっとひっくり返ったときにうまれる新しい常識は残酷ですけど、すごく面白い展開を生んだりしますよね。
プロサンプションもそうなるかもしれませんね。そのときに、恐れおののくほうではなくて、楽しんで笑うほうにいたいなあと思います。
3. Posted by dreamyou    2009年05月27日 17:07
はい。
まさに今意識しなければいけないことって、
「新しい常識」
なんですよね。
多くのビジネスでそれがまだ理解されていないように思えます。
(逆に言えば、ここに無尽蔵の可能性が眠っているかと。まったく、笑っていたいですよね。同感です)
反応ありがとうございました。
4. Posted by 三茶    2009年05月28日 12:15
ふーん、読んでみようかな。

> 次の時代の「消費」の姿
問題意識ナウ。


5. Posted by 広告β    2009年05月29日 01:40
>dreamyouさん
そうですね〜。
なんか見ているだけでも十分楽しいんですけれど、ここはひとつ参加するともっと楽しいんでしょうね。

>三茶さん
ここはTwitterではありませんよ!
6. Posted by むさし    2009年05月31日 21:17
せっかく大枚の広告費を払うのだから、
ウチ(自社)に価値を溜めなきゃもったいない

っていう考え方だと、やはり自社品の特徴を
差別化要素を中心に語る形式になってしまって
「消費の言い訳」コミュニケーション
(いわばカテゴリ全体を活性化させる術)
は実現されにくいような気もします。

選択理由ではなく消費理由を根っこから
掘り起こすことが貴方のブランドにとっても
いいことなんですよ、っていうマーケサイド
からの慎重な説得が必要だと思われますが、
この不景気の時代、骨が折れそうですね。
7. Posted by 広告β    2009年05月31日 23:27
むさしさん、その通りと思います。各企業にとっては他社に塩を送るような施策は容認できない・・・とはいわなくても優先順位が低くなりますよね。その結果、市場全体が盛り上がらなくなるというジレンマがよく見られます。
カテゴリー内での企業コラボレーション企画とか実現すれば面白いとは思うのですが、難しそうですね、さらにこの時代ですし・・
8. Posted by chuukyuu    2009年06月04日 18:46
hatenaのブログ[想像と環境]にも最近書いたのですが、ぼくは、50年近く前に、DDB広告代理店のスペシャル調査部長E.B.ワイズ氏のエッセイ的論文「ものの所有は減る、時間の優雅な使い方が次のステイタス・シンボル]に触発され、消費を旅行と勉強に置きました。

モノの形での消費は最小限にしてきたつもりですが、あいかわらず、身辺には紙くず(本もふくめて)があふれています。なんとかしたいですね。
9. Posted by 広告β    2009年06月10日 13:21
chuukyuuさん、コメントありがとうございます。時間を消費することにしても、その手段としてモノがあふれることがありますよね。いつのまにか、そのモノに情が移って・・・そういうのも、個人的には好きなのですが。
わかった上で、モノに入れ込むというのも、それはそれでありなスタンスだと思います。あんまりアンチ・モノに行き過ぎてしまうと、ちょっぴり悲しいかなと。

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